【新書大賞】歴代大賞受賞作品一覧と主な作品の簡単なご紹介

2022年5月11日

こんな方に

  • 歴代新書大賞受賞作品を知りたい
  • 新書大賞とは何か知りたい

そんな方に新書大賞歴代作品の一覧とを主な作品の簡単にご紹介します。

 

ペディ
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「新書大賞」とは、中央公論新社が主催する1年間に刊行されたすべての新書からその年「最高の一冊」選んだ賞です

2008年からスタートし、2024年で17回目を数えています
ウィック
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ペディ
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歴代の大賞受賞作品を簡単にご紹介したいと思います。

政治・経済や哲学、宇宙から宗教、生物学など、多岐にわたる知的好奇心をくすぐるジャンルがこの大賞作品に詰まっていて、自分の興味の範囲外にも連れて行ってくれます。興味を持ったらぜひ、チェックしてみてください

※本ページはプロモーションが含まれています

 

2024年

大賞 言語の本質 / 今井むつみ 秋田喜美(中公新書)


「オノマトペ」をとっかかりに言語習得の起源まで深掘りする言語学の意欲作

認知科学者の今井むつみ氏は発達心理学の視点から、主にオノマトペを研究している秋田喜美氏は言語学者の視点から言語の本質に迫った共著。

世界中のオノマトペを比較し、音と意味の間で似ていると感じられたり、その反面、母国言語以外は意味がよくわからなかったりするのはなぜかという考察から始まり、幼児の言語取得やAIや動物との違いなどの謎に迫っています。

何気なく使っているオトマトぺに沢山の謎や意味が隠されていて、言語を本格的に学んでみたくなる一冊です。

 

2位 訂正する力 / 東 浩紀(朝日新書)

3位 客観性の落とし穴 / 村上 靖彦(ちくまプリマー新書)

 

 

2023年

大賞 現代思想入門 / 千葉 雅也(講談社現代新書)


現実を単純化しすぎないことの大切さが学べる現代思想の入門書

近年はネットの相互監視の影響などもあり、善と悪、必要と無駄など、なんでもかんでもはっきり白黒つけてしまい、その間にあるグレーなものを許容しない不寛容な傾向が強まっています。

そんな複雑な現実を安易に単純化しすぎないように物事をとらえて、多様性のあるバランス感覚の大切さを学べるのが本書で取り上げる「現代思想」です。

現代思想とは1960年代から90年代に主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学で、それを代表するジャック・デリタ、ジル・ドゥルース、ミシェル・フーコーの3人を中心に、その前後の哲学者も紹介されています。

難解な原書を予備知識なく読み進めるのは困難で、多くの方は入門書を手がかりに読み進めると思いますが、本書はそんな入門書をよりとっつきやすく読むための入門書を目指したもので、わかりやすい例えを交えながら解説してくれます。

 

2位 映画を早送りで観る人たち / 稲田 豊史(光文社新書)

2位 人類の起源 / 篠田 謙一(中央新書)

 

 

2022年

大賞 サラ金の歴史 / 小島 庸平(中公新書)


サラ金の歴史から見た日本経済史

よくティッシュを配っていたのを知る世代からすると身近な存在でしたが、最近は銀行の傘下に入るなどあまり表立っていないように感じられる「サラ金」。

素人高利貸し、団地金融から始まったサラ金は、金融技術革新や法改正による影響など現在まで様々な歴史の流れを辿ってきました。

本書は負の側面だけをただ断罪するのではなく、大手消費者金融会社の成り立ちや創業者の紹介、セーフェティネットとしての役割(善悪は別にして)や家計、ジャンダー問題など様々な要因を含んだ内容で、膨大な文献資料を元にフラットな目線で隈なく紐解いた労作です。

 

2位 生物はなぜ死ぬのか / 小林 武彦(講談社現代新書)

3位 荘園 / 伊藤 俊一(中公新書)

 

 

2021年

大賞 人新世の「資本論」 / 斎藤 幸平(集英社新書)


経済成長と気候問題、マルクス思想をつなげた一冊

「人新世」とは人類の経済活動が地球の表面を覆い尽くした年代という意味とのこと。

経済成長と地球温暖化の対策は、いくら環境に配慮した仕組みを作ろうとも両立しないことを数々の根拠を基に主張しています。

難しいことは正直よくわかりませんが、それを解決するためには晩期マルクスの思想をヒントに脱成長型の社会主義を目指すことを説いていて、これには主義、主張によって意見が真っ二つに分かれるとは思いますが、環境問題に関しては待ったなしであるということはよく理解できます。

 

2位 民主主義とは何か / 宇野 重規(講談社現代新書)

3位 椿井文書 / 馬部 隆弘(中公新書)

 

 

2020年

大賞 独ソ戦 / 大木 毅(岩波新書)

2位 ケーキの切れない非行少年たち / 宮口 幸治(新潮新書)

3位 教育格差 / 松岡 亮二(ちくま新書)

 

 

2019年

大賞 日本軍兵士 / 吉田 裕(中公新書)

 

2位 文系と理系はなぜ分かれたのか / 隠岐 さや香(星海社新書)

3位 陰謀の日本中世史 / 呉座 勇一(角川新書)

 

 

2018年

大賞 バッタを倒しにアフリカへ / 前野ウルド浩太郎(光文社新書)

タイトルや表紙に反して、志の高い作品

歴代受賞の中でも異色な作品に見えますが、実に志の高い作品です。

「神の罰」と恐れられ、農作物に甚大な被害をもたらすアフリカのバッタの大群に挑むバッタ研究者の3年にわたる奮闘記です。

研究者の就職事情は厳しく、論文や実績で名を揚げるために、単身、北アフリカのモーリタニアのバッタ研究所にやってきて、身銭を切りながらフィールドワークに励みます。

軽妙な文体でアフリカならではの非日常の様子や数々の失敗談、ポスドクの苦悩などが書かれていて、表紙のようなおふざけがすぎる格好にも実は切実な深い理由があります。

深刻な飢饉という国際問題に挑みながら、逆境を跳ね返すサクセスストーリーです。

 

2位 未来の年表 / 河合 雅司(講談社現代新書)

3位 日本の近代とは何であったか / 三谷 太一郎(岩波新書)

 

 

2017年

大賞 言ってはいけない / 橘 玲(新潮新書)


遺伝子や脳にまつわる不愉快な現実のあれこれ

この本に書かれているような内容のことをSNSで口走ろうものなら、おそらくほとんど確実に炎上してしまうようなタブーなことばかりが書かれています。

例えば、身体能力や頭脳、容姿など良い面は遺伝と認められるものの、悪い遺伝はないもののようにされがちですが、データ上では当然悪い遺伝もあります。

そんな遺伝や脳による不愉快な現実が多岐にわたってデータを基に語られています。

仮説や著者の主張が強めの部分もあり、すべてを鵜呑みにするのは危険な気もしますが、きれいごとしか許されない現代の社会に一石を投じる、刺激の強い一冊だと思います。

 

2位 人口と日本経済 / 吉川 洋(中公新書)

3位 日本会議の研究 / 菅野 完(扶桑社新書)

 

 

2016年

大賞 京都ぎらい / 井上 章一(朝日新書)

私怨にまみれたまるで京都に対する暴露本

著者は京都市の花園生まれの嵯峨育ちで、そこはいわゆる洛外と呼ばれるところだそうだ。

京都の外からでは伺いしれないが、京都の洛内に住む人からは洛外は京都ではないという差別意識があるとのこと。

そんな京都に対する私怨にまみれた内容で、僧侶や寺、歴史などにまつわる生臭い話を書き綴られています。

京都の裏側を暴くという興味深い面がありながらも差別された側が逆差別しているような負の連鎖が感じられて、正直読者を選ぶ内容だと思います。

 

2位 生きて帰ってきた男 / 小熊 英二(岩波新書)

3位 イスラーム国の衝撃 / 池内 恵(文春新書)

 

 

2015年

大賞 地方消滅 / 増田 寛也 編(中公新書)

 

2位 資本主義の終焉と歴史の危機 / 水野 和夫(集英社新書)

3位 ハンナ・アーレント / 矢野 久美子(中公新書)

 

 

2014年

大賞 里山資本主義 / 藻谷浩介・NHK広島取材班(角川oneテーマ21)

 

2位 犬の伊勢参り / 仁科 邦男(平凡社新書)

3位 ㈱貧困大国アメリカ / 堤 未果(岩波新書)

 

 

2013年

大賞 社会を変えるには / 小熊 英二(講談社現代新書)

 

2位 田中角栄 / 早野 透(中公新書)

3位 日本近代史 / 坂野 潤治(ちくま新書)

 

 

2012年

大賞 ふしぎなキリスト教 / 橋爪 大三郎・大澤 真幸(講談社現代新書)

キリスト教のふしぎに面白さが詰まっている

近代社会に多大な影響を及ぼしているキリスト教ですが、信仰していない人にとっては難解で、理解しづらいことも多々あります。

例えば、信仰とは安全保障のようなものなのに、なぜ弱小とも言えるようなユダヤ教が生き延びて多大な影響を及ぼすようになったのか、またユダヤ教にはなかった原罪という概念がなぜキリスト教になぜ生まれたのか、さらに本当の預言者と偽物をどう見分けたのかなどなど、あげ出せばキリがないキリスト教に関するふしぎな疑問の数々について大澤さんが橋爪さんに鋭く質問をぶつけていき、対談形式で解き明かしていきます。

納得できることもあれば理解しづらいこともやっぱりあったりしますが、それも含めてストーリー性と謎解きのような面白さがあります。

 

2位 昭和天皇 / 古川 隆久(中公新書)

3位 TPP亡国論 / 中野 剛志(集英社新書)

 

 

2011年

大賞 宇宙は何でできているのか / 村山 斉(幻冬舎新書)

難解だけど宇宙のわからなさがなんとなくわかる

「宇宙という書物は数学で書かれている」というほど数学や物理が苦手な文系人間の自分にはちんぷんかんぷんだらけですが、それでも入門編としてわかりやすく言語化してくれています。

昔は万物は原子からできていると習ったはずが、実は星やガスなど宇宙にあるすべての原子が占める割合は全エネルギーのたった4.4%だという。ではそれ以外の96%とはなんなのかというとまだわからず、暗黒物質や暗黒エネルギーと名付けられているだけで解明されていません。

そんなわからないことだらけの宇宙の始まりはどんな性能の望遠鏡でも見ることはできないが、物質を作る最小単位の素粒子の謎を解き明かせば、宇宙の成り立ちがわかるのではというのが、本書のテーマとなっています。

 

2位 デフレの正体 / 藻谷 浩介(角川oneテーマ21)

3位 街場のメディア論 / 内田 樹(光文社新書)

 

 

2010年

大賞 日本辺境論 / 内田 樹(新潮新書)

日本人の今後の目指すべき在り方を述べた書

日本文化とは何で、日本人とはどういう集団なのか。

思想や言語、イデオロギーなど外来のものを日本的なものに変容していく変わり身の速さこそ日本の伝統的なスタイルなので、どこまで辿っても祖型があるわけではなく、エンドレスに続く問いだと述べています。

自信が持てず、不安な気持ちを抱えている我々日本人は学ぶ力を喪失しているが、だからこそそのまま真似するスタイルでいいということを歴史的な作品の引用や様々な例えを交えて、哲学的に問いかけています。

思想が絡むので、意見の分かれる部分もあるかもしれませんが、示唆に富んだ内容だと思います。

 

2位 差別と日本人 / 野中 広務、辛 淑玉(角川oneテーマ21)

3位 音楽の聴き方 / 岡田 暁生(中公新書)

 

 

2009年

大賞 ルポ 貧困大国アメリカ / 堤 未果(岩波新書)

 

2位 強欲資本主義 ウォール街の自爆 / 神谷 秀樹(文春新書)

2位 できそこないの男たち / 福岡 伸一(光文社新書)

2位 電車の運転 / 宇田 賢吉(中公新書)

 

 

2008年

大賞 生物と無生物のあいだ / 福岡 伸一(講談社現代新書)


興味を持ち続けることの大切さが感じられる傑作

著者は生物学者にして、多数の著書も執筆していて、生物学者とは思えないほど難しい内容を美しい文体で噛み砕いて表現するところに魅力があります。

研究者としてNYでどのように活動してこられたかから始まり、過去のDNAやウイルスの発見など歴史的な研究成果を辿っていき、生物とはどのような状態を指すかの線引きのところまでご自身の研究テーマである動的平衡の説明とともに、わかりやすく綴られています。

小さな頃から虫や植物を愛で、その興味を持ち続けて生物学者になったその生き方は、お手本になるのでないでしょうか。

 

2位 となりのクレーマー / 関根 眞一(中公新書ラクレ)

3位 1997年―世界を変えた金融危機 / 竹森 俊平(朝日新書)

 

 

まとめ

ウィック
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いかがでしょうか。新書ならではの知的好奇心を満たしてくれる大賞作品に、ぜひふれてみると新しい発見があると思います
ぜひ、読み逃している作品がありましたら、読んでみてください
ペディ
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