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こんな方におすすめの定番ミステリー小説をご紹介します。
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2020年代
『世界でいちばん透きとおった物語』杉井 光 〔2023〕
燈真は大御所ミステリ作家の宮内彰吾と愛人の子で、父と面識がなく育ちました。
そんな中、宮内が死去し、宮内の長男から死ぬ間際に『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を書いていたらしいからその遺稿を持っていないかと連絡がきます。
燈真は父の愛人たちをあたって、その原稿を探すというストーリーです。
そのタイトルに隠された衝撃の事実とタイトル負けしないトリックにきっと驚かされることでしょう。
『君のクイズ』小川 哲〔2022〕
クイズの裏側に迫った新感覚ミステリー
優勝賞金1000万円をかけたクイズ番組の最高峰『Q-1グランプリ』決勝の早押し最終問題で、三島玲央の対戦相手・本庄絆はまだ一文字も読まれないうちにボタンを押してなんと正解してしまう。
果たしてそれはクイズだったのか? それとも魔法だったのか? それとも・・・?
どうしても納得できない三島は、その後彼のことを調べ、決勝を1問ずつ振り返っていきますが、果たしてその真相とは。
クイズに正解するときには必ず、問われている問題と過去の自分の経験が重なるそうですが、クイズの回答者、作り手それぞれの考えていることがリアルに体験できます。
クイズを題材にした映画にダニー・ボイル監督による『スラムドッグ$ミリオネア』という傑作がありますが、それを彷彿とさせるヒューマンドラマとしても楽しめるエンタメ新感覚ミステリーの傑作。
『逆転美人』藤崎 翔〔2022〕
世間を賑わせた事件を巡って手記を出版することになったシングルマザーの香織(仮名)。
彼女が飛び抜けた美人に生まれたがゆえに幼少期から不幸な人生を歩んできた生い立ちを、ルッキズムに対する警鐘とともに事件に至るまで一冊丸ごと独白形式で綴っていきます。
世間を震撼させたその手記とタイトルに込められた本当の意味とは。
この作品のトリックは過去にも例があるにはありますが、ストーリーの必然性の中で超絶的に仕掛けられていて、驚愕すること必至です。
『方舟』夕木春央〔2022〕
ミステリオールタイムベストランキングが塗り変わるかもしれない傑作
誰か1人の犠牲によって他の全員が助かることができるというジレンマ問題がありますが、見事な設定で本格ミステリに落とし込んでみせた作品です。
大学時代と友達たちと興味本意で山奥にある地下建築に偶然出会った家族とともに入り、閉じ込められられてしまいます。
その構造上、出るためには誰かが中に残らなければいけません。
誰を残すか決めなければいけないそんな中、殺人事件がおこり、その犯人が残るべきだと思い、犯人探しがはじまります。
舞台設定といい、犯人の意外性やラストのどんでん返しといい、本格ミステリでここまで衝撃を受けたものは近年では最高峰かもしれません。
本格ミステリに新たな金字塔を打ち立てた傑作。
『名探偵のいけにえ: 人民教会殺人事件』白井智之〔2022〕
かつて新興宗教によって家族をめちゃくちゃにされたりり子は探偵・大塒(おおとや)のもとで助手をつとめていましたが、彼女は大塒をもしのぐ推理力を持っていました。
その彼女がある日消息を立ち、向かった先はガイアナ共和国で活動する病気や怪我も存在しない奇蹟を売りにするカルト教団・人民教会でした。
彼女を救うべく教団に乗り込んだ大塒に奇妙に連続する死亡事件がふりかかります。
事件は奇蹟によるものなのか殺人なのか。そして奇蹟を信じる教団に現実のロジックは通用するのか。
400ページ弱あるうちの約150ページが解決編という圧巻の推理が畳みかけられます。
多重解決や特殊条件ミステリの大本命とも言える作品です。
『黒牢城』米澤 穂信〔2021〕
信長に謀反を起こした代表的な人物といえば、明智光秀、松永久秀、そしてこの小説の主人公の荒木村重です。
信長に反旗を翻し、有岡城に籠城する荒木軍だが、共闘しようとした毛利や宇喜多の軍勢は到着せず、城内では村重の意に反するような難事件が頻発し、不穏な雰囲気が漂います。
信長の使者として説得に来た軍師、黒田官兵衛を幽閉しますが、彼の知恵を頼って、アームチェアディテクティブよろしく牢に入れられたまま密室殺人や不可能現象の謎を解決しようとする連作短編の歴史ミステリーです。
史実に即して荒木の行く末を辿りつつも、歴史の裏側を利用して一級のミステリー小説に仕上げてしまった著者の新たな真骨頂といえる直木賞を受賞した傑作。
『同志少女よ、敵を撃て』逢坂 冬馬〔2021〕
第二次世界大戦下でドイツに侵攻されるソ連において、実際に存在した女性狙撃部隊を題材にした作品です。
平凡な少女だった主人公が、ドイツ軍によって母親を殺害されて村を焼かれ、狙撃訓練校に入り、スナイパーとして戦場に立つ生涯が描かれています。
敵と味方、正義と悪、男と女、復讐すべき相手と守るべき相手、何が正しくて信じられるのかがラストに問われます。
第11回アガサ・クリスティー賞を受賞し、さらに直木賞、本屋大賞にもノミネートされる注目作で、著者が新人ということにも驚かされます。
『花束は毒』織守 きょうや〔2021〕
“100%騙される戦慄!”という惹句の通り、その手のどんでん返しが好きな人にはたまらない作品です。
ストーリーは、「結婚をやめろ」という嫌がらせの手紙に悩まさている知り合いのために、主人公が探偵に調査してもらうというワンテーマで、正直クライマックスまでは少し物足りない感じはしますが、ラストは期待通りの戦慄を楽しむことができると思います。
主人公の探偵の女の子もキャラがたっていて、秘密がありそうだけど、そこがあまり描かれていない感じがしたので、シリーズの予感も感じられます。
『硝子の塔の殺人』知念 実希人〔2021〕
まずは帯で新本格ミステリを代表する方々が勢ぞろいしてコメントを寄せているところから期待しないわけにはいかないでしょう。
タイトルから想像できる通り、ミステリのお約束と蘊蓄をこれでもかと詰め込んだミステリ小説に迷い込んでしまったようなメタミステリ的作品。
「新本格」の総決算ともいえるようなミステリ好きには避けて通れない傑作です。
『テスカトリポカ』佐藤 究〔2021〕
臓器ブローカーがテーマという万人受けするとは言えないかもしれないですが、クライム・ノベル好きにはたまらないでしょう。
メキシコ、インドネシア、日本を舞台に、次々と登場人物の語り手がリレーしていく展開が斬新。
滅亡したアステカ王国に伝わる「煙を吐く鏡」という意味を持つテスカトリポカとはいったい何をあらわしているのか。
第165回直木賞、第34回山本周五郎賞を受賞した文句なしの傑作です。
『六人の嘘つきな大学生』浅倉 秋成〔2021〕
サバイバルドキュメンタリー番組のエッセンスを取り入れ、ミステリー小説にまだこんな手があったか、とうならされました。
殺人事件がおこらなくてもこんなにスリリングなミステリー小説を楽しめるとは。
時代の先端をいく会社の就職試験をめぐり、最終選考に残った6人におこったある事件ともいえる出来事。登場人物たちの表と裏はどっちが本当の姿なのか。
犯人候補が二転三転する展開も見事だけど、張り巡らされた伏線回収もすばらしいです。
それにつけても、就活というのは人生において実に不条理で厄介なものだとあらためて思いました。
『正体』染井 為人 〔2020〕
二歳の子供を含む一家三人を惨殺した罪で死刑判決を受けていた少年死刑囚が脱獄します。
彼は変装し名前を変え、工場現場や在宅ライター、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、介護施設と転々としていきます。
その場所で出会った人の視点で捉えられていく彼の人柄と逃亡の目的とは。
安易な結末を用意しないところも含めて一気読み必死の見事なエンタメヒューマンミステリー。
『野良犬の値段』百田尚樹〔2020〕
SNSに突然現れた「誘拐サイト」なるサイト。犯行声明で明らかになった人質とは6人のホームレス。
果たして事件なのかいたずらなのか、注目される意外な身代金の要求先とその目的とは?
一部では身代金を要求される側、二部では犯人からの視点で描かれますが、見方が一変します。
数々の事件を想起させる内容で、百田さんならではのテレビや新聞などメディアをしっかり皮肉った本音と建前の暴露的な内容とエンタメとしての面白さをしっかり両立された著者初のミステリ作品です。
2010年代
『予言の島』澤村 伊智〔2019〕
今ではすっかりテレビで見ることがなくなった霊能者たちですが、一世風靡した時代がたしかにありました。
かつてオカルト好きだった幼馴染たちが興味本位で訪れた場所は、数々の予言を当てると人気だった霊能者が、20年後に6人の死者が出ると予言を残していた瀬戸内海のとある島。
その島にある山は怨霊が下りてくると言い伝えがあり、山に登ることは禁止されています。
それぞれの理由でやってきた観光客たちがその禁為をやぶって目にするもの、そしておこる悲劇とは。
横溝、京極、三津田作品の民俗的な世界観に真っ向から勝負するミステリーホラー作品。
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢 沙呼〔2019〕
タイトルからして、なんだか内容が想像がついてしまいそうな感じですが、それが実は作者の罠。
正直、読むとなんだかぼやっとした展開だなっと思ってしまうんだけど、それらはすべて伏線なので、読んでびっくりしてください。
『完全無罪』大門 剛明〔2019〕
21年前の少女誘拐事件が冤罪再審裁判がおこなわれることになり、弁護士として抜擢されたのがかつて自分も誘拐された過去を持つ松岡千紗だった。
事件の鍵を握るのは逮捕時に違法な取調べを行った疑いのある元刑事の存在です。
果たして容疑者は冤罪なのか、本当に殺人犯なのか、衝撃の結末が待っている「冤罪」を題材にしたミステリーです。
『かがみの孤城』辻村 深月〔2017〕
これを読んでいない人はもったいない、ファンタジックミステリーの大傑作!
本屋大賞も受賞した辻村深月さんの集大成ともいえる最高傑作の呼び声高い作品。
ミステリーといっても殺人事件などがおきるというものではありません。
不登校になってしまった主人公たちが鏡の世界に引き込まれてしまうというファンタジックなストーリーながら、実はものすごく現実的な内容。
張り巡らされた伏線の回収が見事の一言。
『悪寒』伊岡 瞬〔2017〕
一気読み間違いなし、主人公と同じ気持ちでなぜ?が気になるサスペンス・ミステリー
できれば詳細を知らずに主人公と同じ気持ちになって読んでほしいので、あらすじはほとんど核心にふれず簡単に説明します。
主人公は大手製薬会社に勤めていましたが、あることがきっかけで地方の系列会社に単身赴任で出向させらています。
そしてある時期から妻も娘も冷たい態度をとるようになっていて、思い当たることもなくとまどっています。仕事もうまくいかず、家庭にも不安がつのるそんなある日、妻から家でトラブルがあったという不可解なメールが届き、東京に戻って見ると思いがけない事実を知らされます。
この小説は冒頭で裁判の様子が出てきますが、そんなある事件がおこるまでの様子と裁判パートの2章からなっていて、ずっと違和感があり、なぜ?が気になって一気読み間違いなしの作品です。
『屍人荘の殺人』今村 昌弘〔2017〕
先人にやり尽くされてしまったトリックにまだこんな新しい方法があったんだと感心してしまいます。
大学の映画研究会の合宿先の別荘・紫湛荘(しじんそう)で起きた連続殺人事件に遭遇したメンバーが生き残りを懸けて真相に迫ります。
『22年目の告白-私が殺人犯です-』浜口 倫太郎〔2017〕
原案は韓国映画『殺人の告白』で、そのリメイク映画を小説化したもの。
時効を迎えたかつての殺人犯が、殺人の告白本を出版するという内容。
昨今の売れるならなんでも出版するという現状に一石を投じているとも言える作品で、エンタメ度がかなり高めです。
『神の値段』一色 さゆり〔2016〕
バンクシーをはじめとして、現代アートはなぜあれほどの値段がつくのか素人にはわからないことが多いですよね。本作は、そんな現代アートの裏側を描いたアート・サスペンスです。
世界中で評価されつつ、いっさい人前に姿を見せない日本人作家の作品だけを扱うギャラリー、そのオーナーだけが作家と通じていましたが、何者かによって殺されてしまいます。
なぜ殺され、そして作家は本当に生きているのか、という殺人事件はある意味おまけ的でもあります。
著者自身が東京芸大卒でギャラリー勤務経験を持つ方なので、ディティールもしっかりしていて、どちらかといえば現代アートの世界の方がよっぽどミステリーであるということが感じられる作品です。
『その可能性はすでに考えた』井上 真偽〔2015〕
この作品が斬新なのは、探偵がある理由で奇蹟の存在を信じているということです。
そのため、奇蹟を立証するために反証の推理を繰り返します。
ある新宗教団体が10年以上前に起こした集団自殺事件でたった一人生き残った少女が、自分が人を殺したかどうかを解決してほしいと推理してほしいと探偵に依頼します。
話を聞き、探偵はその事件は奇蹟だと認定するが、それを覆そうと次々と仮説を立てる刺客が現れます。
設定がかなり複雑なので理解に苦労しますが、今までになかった斬新な多重解決ミステリーを楽しむことができます。
『聖母』秋吉理香子〔2015〕
人間ドラマとトリックを最高の形でかけ合わせた驚愕のサスペンス・ミステリー
この作品は3つの視点で描かれていきます。
一つ目は不妊治療の末にようやく授かった子をなんとしても守ろうと誓う保奈美。
二つ目は、近所で幼児殺害事件がおき、それを追うベテランの坂口刑事。
三つ目は剣道部に所属する高校生で、女子にも人気のある優等生の真琴です。
早い段階で幼児殺害事件の犯人は明かされますが、それを知ったうえで物語を読み進めていくと、張り巡らされた伏線やミスディレクションをたとえ見破ったとしても、想像の斜め上をいくサプライズが待っています。
コンパクトな作品なのに、不妊治療やフェミニズムの問題など人間ドラマも盛り込まれていて、まさに脱帽の傑作ミステリーです。
『出版禁止』長江 俊和〔2014〕
タイトルだけ見るとホラー感が漂うものの中身はドキュメンタリータッチの異形なミステリーです。
著者本人が手にした出版禁止となったいわくつきの原稿。その中身は心中事件で生き残った女性への独占インタビューをまとめたもの。ライターはその女性へインタビューを重ねるうちに、本当に心中だったのか疑問に思い始めます。
その謎をつきとめようとするうちにだんだんその女性へ気持ちが傾いていき、思わぬ展開が待ち受けています。きっとその真相に騙されるはず。
『教場』長岡 弘樹〔2014〕
警察小説の名手・横山秀夫さんに帯で「脱帽」と言わしめた、普段窺い知ることのできない警察学校を舞台にした嚆矢ともいえる作品です。
世間的にいえばパワハラのような指導で、不要な人材をふるいにかけるような厳しいところ、それが教場という警察学校におけるクラスです。
一見仲がよさそうに見える関係性の中から生まれるさまざまなトラブルを、まるですべてを見通しているかのような白髪の教官・風間が解決する警察トリビアがつまった人気シリーズ第一作目。
『検察側の罪人』雫井 脩介 〔2013〕
警察小説ほど数多くはありませんが、検察を舞台にした司法ミステリーも面白いです。
東京地検の検事・最上のもとに検察教官時代の教え子、沖野が配属されてきます。
大田区蒲田で老夫婦殺害事件が発生し、その容疑者に浮上したのが23年前に最上が住んでいた学生寮で起きた女子中学生殺人事件の有力容疑者でした。
すでに時効を迎えていたものの、最上はなんとか彼に法の裁きを受けさせようと執念を燃やします。
しかし、取り調べにあたる沖野は、だんだん冤罪ではないかと疑問を持ち始めていきます。
謎解きというよりは、時効と司法制度の問題点を考えさせられる社会派ミステリーとしての側面が強く、それぞれの人物が丁寧に描かれていて、本当の正義とは何かを考えさせられる司法ミステリーの傑作です。
『犯罪者 上・下』太田 愛〔2012 ※初出は『犯罪者 クリミナル』〕
ドラマ『相棒』シリーズの脚本を手がけた著者の初小説作品にしてとんでもない傑作
これは読まないと人生を損するレベルのクライムサスペンス小説です。
一見無差別殺人かと思われた事件。犯人は逮捕されたものの、ただ一人生き残った少年に近寄ってきた謎の男が「あと十日。十日、生き延びれば助かる。生き延びてくれ。君が最後の一人なんだ」と警告します。この事件の影にちらつく政治家や幼児の奇病との因果関係とは?
複雑な設定と登場人物の多さをものともしない状況描写の巧みさに脱帽です。まさに映像が目に浮かぶとはこのこと。
ちなみに次作『幻夏』と3作目の『天上の葦』で3部作となっていますが、ぜひこの作品から読むことをおすすめします。
『インサート・コイン(ズ)』詠坂 雄二 〔2012〕
ゲーム好きや書く仕事をしている人には刺さるであろうゲームライターの日常の謎を解く青春物語
ゲーム雑誌「プレススタート(通称プレスタ)」でゲームライターをしている柵馬は、尊敬する流川を師匠と仰ぎ、励んでいます。
特集のゲームにまつわる記事を書くために、ネタを探すなかで疑問が浮かび上がり、その謎を解いていきます。
題材は、「スーパーマリオ」「ぷよぷよ」「格ゲー」「インベーダー」「ドラクエIII」と名作にちなんでいます。
ライターという職業を続けるにあたり壁にぶつかり、それをゲームをクリアしてくかのように謎を解き明かしていくのですが、主人公がライターとして成長していく青春物語としても楽しめます。
さらに著者が実名の小説家として登場しています。
『体育館の殺人』青崎 有吾〔2012〕
ライトではあるけど、気をてらわずしっかり本格探偵小説として楽しめます
放課後の体育館で生徒が刺殺される。謎めいた証言が多々あるものの、手がかりはほとんど見つからず、現場は密室状態。
容疑をかけられた卓球部の部長の疑いを晴らすために、卓球部員が探偵に依頼します。
その探偵役を務めるのは、校内に住み着いているという噂の、テストで全科目満点を取ってしまうアニメオタクの天才。
ライトではあるけど、読者への挑戦もあり、奇をてらっていなくてしっかり本格探偵小説として楽しめます。
平成の“エラリー・クイーン”との呼び声高い第22回鮎川哲也賞受賞作のデビュー作で、『水族館の殺人』、『図書館の殺人』などシリーズ作品もあります。
『ビブリア古書堂の事件手帖』三上 延〔2011〕
“日常の謎”とは、殺人事件などではなく、せいぜい軽犯罪かもしくは犯罪ですらない普段の日常生活に潜む謎をとくミステリーのジャンルのことで、この小説は古書にまつわる謎解きがテーマのミステリー小説。
ライトノベルと一般の小説との架け橋となった作品ともいえる人気シリーズで、後にたくさんの類似形小説を生みましたね。一度完結したものの第2シリーズに突入しています。
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』丸山 正樹〔2011 ※初出は『デフ・ヴォイス』〕
『デフ・ヴォイス』とは直訳すると耳が聴こえない人の声のことです。
主人公はろう者(本作品の表記)の両親から生まれた聴者(耳が聴こえる人)で、手話を使えることから、手話通訳士の資格を取得します。
法廷でろう者のために通訳をすることになりますが、厳しい現実を知ります。彼はかつて警察で事務の仕事をしていた関係で、ろう者にまつわる事件に関わっていて、過去の事件と現在に起きている事件の関係を追うことになります。
ろう者の中にも対立があり、いかに社会で声が届きにくいかも痛感させられる著者のデビュー作にして、こんな切り口があったかと思わせる切なく心震えるシリーズ作品です。
『アリアドネの弾丸』海堂 尊 〔2010〕
医師でもある海堂尊さんによる大ベストセラー「チーム・バチスタ」シリーズは、不定愁訴外来、通称“愚痴”外来と呼ばれる田口医師と厚生労働省の役人・白鳥のコンビによる病院内の事件を解決する医療ミステリーで、本作はその第5弾の作品です。
田口は新たに設立されるエーアイセンターのセンター長に任命されてしまいますが、その矢先に新しく導入された新型MRIの技術者が不審な死を遂げます。
さらにMRIを巡って、新たな事件が起こりますが、その事件の犯人に病院長の高階が容疑者として捕まってしまいます。田口と白鳥は病院の命運をかけて謎を解き明かしていきます。
MRIという特殊な特性を活かした謎解きで、犯人や現実の既得権益に直結している犯行の動機などはほぼほぼ割れているものの、殺害方法やアリバイ崩しなどハウダニットの部分が練りに練られていて本格ミステリー度の高い作品となっています。
『さよならドビュッシー』中山 七里〔2010〕
第8回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作で遅咲きの著者のデビュー作品です。
資産家の家庭に育つピアニストを目指す少女は、ある日火事で祖父と従姉妹を失い、自分も重度の火傷を負ってしまう。その怪我からコンクール優勝を目指して猛レッスンするも、周囲で自分を狙った出来事が次々と襲いかかり、さらに殺人事件も起こるという、スポ根とミステリーが融合した作品。
設定に若干無理があるものの、ミステリー設定が邪魔に思ってしまうぐらいピアニストを目指す描写が素晴らしく、見事なラストは見ものです。